腸内細菌は免疫機構をくぐり抜けどうやって腸内で暮らすようになるのか?→IgA抗体が関与

腸内細菌は免疫機構をくぐり抜けどうやって腸内で暮らすようになるのか?腸内フローラを改善する
本サイトはプロモーションが含まれています
スポンサーリンク

腸内細菌ってどうやって腸内に住むようになるの?

この疑問をようやく解決してくれそうな本に出会うことができました。今回の記事も前回の『【リーキーガット】糖尿病患者は血液中に生きた腸内細菌がいる!?』に引き続き、『腸内フローラ10の真実』から気になったことを書いていきたいと思います。

個人的に、この本の中で最も面白いところでした!

スポンサーリンク

1 腸内細菌はどこに住んでる?

腸内細菌の多くは大腸に住み着いています。大腸の表面は『粘液層』で、ムチンと呼ばれるネパネパした物質の層で、厚さは0.1ミリです。

 

ムチンは粘り気が強く食べ物と一緒に流れていくことがないので、粘液層に入ることができれば、細菌たちは安住の地を得ることができるのです。

1.1 腸内細菌はどうやって粘液層に入るのか?

前回の記事で書いたことなのですが、粘液層はそもそも外敵を腸内から血液中に侵入させないための防御膜みたいなものです。つまり腸を守るためのものなんですね。

 

だから普通の菌は粘液層に住み着くことができません。粘液層に住み着くことができる細菌は『特定の細菌のみ』なのですね。

 

私たちの体は特定の細菌のみを選んで、腸内に住み着かせる巧妙な仕組みを持っています。その鍵を握るのが『IgA抗体』です。

 

抗体とは免疫細胞が作り出すもので、細菌やウィルスなどの外敵を倒します。細菌やウィルスは多種多様ですから、抗体にもいくつか種類があります。

 

その中でも腸にいる白血球が作り出すのが『IgA抗体』で、この抗体は謎の多い抗体でした。というのも、他の抗体と違って細菌を殺す力がないからです。

 

理化学研究所のシドニア・ファガラサン研究員は遺伝子操作によって、IgA抗体を作り出す白血球が存在しないマウスを作りました。すると、IgA抗体を作り出す白血球がいないマウスの腸内では、腸内フローラの多様性が大きく低下することがわかりました。

 

そしてそのマウスにIgA抗体を出す白血球を外から入れてやると、腸内フローラの多様性も高まりました。つまり、IgA抗体は腸内細菌を助ける役割があることがわかりました。このIgA抗体こそが、粘液層に腸内細菌を住まわせるお手伝いをしていたのです。

1.2 IgA抗体の性質

IgA抗体に限らず、抗体は細菌にくっつく性質があります。普通の抗体は細菌にくっついて殺すのですが、IgA抗体は違います。

 

くっつくことで、粘液層に入りやすくします。でもそれだと、どんな細菌にもくっついて、どんな細菌でも粘液層に入れちゃうことになります。これは危険です。

 

だからIgA抗体は、特定の細菌のみにくっつくように狙いを定めて作られているのです。ここで面白いことなんですが、IgA抗体がくっつかない細菌は粘液層で暮らせないのはもちろんなのですが、くっつきすぎた細菌も粘液層では暮らすことはできません。というのも、IgA抗体がくっつきすぎた場合は、細菌身動きが取れなくなり、増殖できなくなるからです。そのため、適度にIgA抗体がくっつく細菌のみ粘液層で暮らすことができるそうなのです。

 

適度ってどれくらいよ?と気になるところですが、これについてはファガラサンさんもまだよく分かってないそうです笑。でもこの曖昧さが『生物の仕組み』らしいですね。

1.3 IgA抗体はどうやって細菌を選んでいるのか?

ここで気になるのが「IgA抗体はどうやって細菌を選んでるの?」ということです。これについても科学的にばしっと説明できるものはなく、細菌と人類が長い年月をかけて共進化したから、としか言えないみたいです。

1.4 盲腸の下にある虫垂とIgA抗体

IgA抗体と虫垂に関連性を見つけたのが、大阪大学教授の竹田潔さんの研究グループです。虫垂とは盲腸の下にある細い管状のものです。馴染みのない言葉ですが、『虫垂炎=盲腸』と一般的には知られており、いらない臓器と呼ばれています。

 

いらない臓器として『モウチョウ』と診断された人は、手術で切り取られています。しかし、なんと虫垂はIgA抗体を生み出すために重要な役割を果たしていることがわかってきたのです。

 

無菌状態で育ったマウスには、IgA抗体を出す白血球がほとんどいません(腸内に細菌がいないため、IgA抗体を出す白血球が必要ないから)。このマウスを菌がいる普通の環境に移すと、IgA抗体を出す白血球が増えていきます。

 

竹田さんの研究グループでは、無菌マウスの『虫垂』を切除して同様の実験を行いました。すると、虫垂がないマウスは、菌のいる環境に移ってもIgA抗体を出す白血球がうまく増えないことがわかりました。また最終的に、定着する腸内フローラのバランスが乱れていることもわかりました。

 

じつは、虫垂の中には白血球が集まる特別な場所、虫垂リンパ組織があります。ここで白血球たちは腸内にどんな細菌がいるかを学習し、その細菌をターゲットにしたIgA抗体を作れるように成長していきます。いわば、白血球の学校のような場所です。

 

このことから、私たちが腸内細菌を選ぶルートは次の2つがありそうだと考えられます。

  1. 共進化によって遺伝子が選んでいる
  2. 虫垂で行われる白血球の細菌学習

 

腸内フローラは一人一人違うと言われますが、その理由はこのように、共進化と虫垂での学習の2つの理由があるからなのでしょう。人によって遺伝子も違えば、出会う細菌も違い虫垂リンパ組織の中で行われる学習も異なるのですね。

 

ちなみに、「私、虫垂切り取っちゃったんだけど・・・」という人も安心してください。竹田さん曰く、発達段階では重要かもしれないけど、ある程度成長してから切除してもほとんど影響はないだろう、とのことです。また白血球の学校となるリンパ組織は小腸にも存在し、虫垂がなくてもIgA抗体が全く作れないというわけではないそうです。

おわりに

なかなか興味深い話ではありませんでしたか?私はずっと「なぜ腸内細菌は人間の免疫機構によって攻撃されないのだろう?」と疑問に思っていたので、それが解決して超スッキリしました。

 

まさかIgA抗体が腸内細菌に関係しているとは・・・びっくりです。参考までに。それでは!

*腸内環境の大切さを勉強するためのオススメ本

今までに多くの『腸内環境の大切を伝える本』を読んできました。その中でもイチオシなのがアランナ・コリン先生の『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』になります。

分厚くて少々読みにくいかもしれませんが、腸内環境の大切さを深く知っておく上で外せない一冊になります。

「もうちょっと読みやすい本を頼むぜ!」という方のためオススメできる本は、『腸科学』になります。こちらは読みやすいと思います。

どちらのほんも「腸内細菌スゲー」と思うこと間違いなしです!

コメント