問題です、風邪に抗生物質は効くでしょうか?
答えは「風邪そのものには効かない」です。
普通の風邪の多くはウイルスが原因。抗生物質などの抗菌薬は、細菌を殺したり増えるのを抑えたりする薬で、ウイルスには働きません。
ただし、似た症状でも細菌による感染症なら、抗菌薬が必要なことがあります。
2025年7月のインターネット調査では、抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある576人のうち、なんと3割が「風邪に効果がある」を正しいと答えました。
「でも、前に飲んだら治ったよ?」と思う人もいるかもしれません。この経験と、クイズの答えはどうつながるのでしょうか。
抗生物質を乱用すると薬剤耐性菌が怖い
抗生物質といえば有名なのが、青カビから見つかったペニシリンです。1928年、フレミングさんは青カビの周りで細菌が育ちにくくなっていることに気づきました。
発見してすぐに広く使えるようになったわけではありません。その後の研究や生産技術の発展を経て、1940年代に治療に広がっていきます。細菌感染症の治療に大きな道を開いた薬です。
では、風邪のときに飲んで良くなった経験は、どう考えればいいのでしょう。
厚労省の手引きは、風邪が自然に良くなる時期と薬を飲み始めた時期が重なると、薬が効いたように感じることがあると説明しています。「飲んだ後に治った」と「飲んだから治った」は、同じとは限らないんですね。

その経験から次も薬を期待する人がいたり、不要でも害はないと考えて処方されたりした可能性もあります。原因を見分けにくい場合もあり、過去の処方を一つの理由だけで説明することはできません。
ここで気になるのが、「効かなくても害はないの?」ということです。
抗菌薬は風邪のウイルスには効きませんが、体にいる細菌には働きます。薬が効く細菌が減る一方、効きにくい細菌が生き残り、増えやすくなることがあるのです。

このように薬が効きにくい細菌を、薬剤耐性菌といいます。耐性を持つのは私たちの体ではなく、細菌のほうなんですね。
耐性菌が広がれば、いざ細菌感染症を治療するときに、使える薬が限られてしまうことがあります。抗菌薬の使い方だけでなく、感染予防や衛生も、その広がりに関わります。
では、抗菌薬の使われ方は変わってきたのでしょうか。
日本の全国データを使った研究では、ウイルス性上気道感染症の受診に抗菌薬が処方される割合は、2012年度から2020年度にかけて低下しました。
一方、2022~2023年の国内1,183診療所のデータを使った研究もあります。風邪や気管支炎など、細菌性ではないと分類された気道の感染症で成人が受診した際、抗菌薬の処方割合は17.5%と推計されました。診療記録をもとにした分類なので、個々の処方の適否までは分かりません。
抗生物質は腸内細菌にも影響する
もう一つ、私たちの体の中でも起きることがあります。

腸にはたくさんの細菌が暮らしていますが、抗菌薬は病気の原因となる菌だけでなく、腸内の細菌の一部にも影響することがあります。
影響は薬や人によって違います。「腸内細菌が全部いなくなる」という話ではありません。また、抗菌薬では下痢や吐き気などの副作用が出ることもあります。
風邪そのものには効果を期待できなくても、細菌への影響や副作用は起こりうる。ここが「とりあえず飲んでおけば安心」とは言い切れないところです。
抗生物質を飲んだ後の腸内細菌や回復については、末尾の関連記事で詳しく取り上げています。
必要なときに、指示どおりに使う
診察を受けて抗菌薬が出なかったとしても、「何もしてもらえなかった」とは限りません。
何が原因と考えられるのか、症状をどう和らげるか、どんな変化があれば再び相談するかを聞いてみると、経過を見守るときの安心につながります。
抗菌薬を処方されたときは、次のことを心がけましょう。
- 決められた量・回数・日数などの指示を守る
- 残った薬を自己判断で次の病気に使わない
- 薬を他の人に譲ったり、共有したりしない
- 疑問や気になる副作用があれば、医師や薬剤師に相談する
服用後に急な息苦しさや顔・唇の腫れなどが現れ、重いアレルギー反応が疑われるときは、直ちに救急車を呼んでください。
風邪のような症状が悪化したり、高熱が続いたりするときも医療機関に相談しましょう。呼吸が苦しいときは速やかに受診し、強い息苦しさがあれば救急車を呼んでください。
まとめ
「薬をもらえたから安心」だけでなく、「今の症状に何が必要で、これからどう見ていけばいいか」がわかることも安心につながります。
手洗いや休養を大切にしながら、困ったときには医療者に相談していきたいですね。
参考までに。それでは!
*抗生物質関連記事
参考資料
厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第三版」患者向けFAQ
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001333580.pdf
厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版 医科・外来編」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001630903.pdf
AMR臨床リファレンスセンター「抗菌薬意識調査レポート2025」
https://amr.jihs.go.jp/pdf/20251001_report.pdf
Gaynes R. The Discovery of Penicillin—New Insights After More Than 75 Years, Emerging Infectious Diseases, 2017
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/23/5/16-1556_article
Hashimoto H, et al. Significant reduction in antibiotic prescription rates in Japan following implementation of the national action plan on antimicrobial resistance (2016–20): a 9-year interrupted time-series analysis, JAC-Antimicrobial Resistance, 2025
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12041918/
Aoyama R, et al. Clinic Characteristics and Antibiotic Prescribing for Acute Respiratory Infections in Japan, JAMA Network Open, 2024
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2825144
AMR臨床リファレンスセンター「どのように耐性化するのか」
https://amr.jihs.go.jp/general/1-2-1.html
WHO, Antimicrobial resistance
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/antimicrobial-resistance
CDC, Antibiotic Use and Antimicrobial Resistance Facts
https://www.cdc.gov/antibiotic-use/data-research/facts-stats/
NHS, Side effects – Antibiotics
https://www.nhs.uk/medicines/antibiotics/side-effects/
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー」(PMDA掲載)
https://www.pmda.go.jp/files/000279383.pdf
厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2026.html
厚生労働省「こんな時は迷わず119へ」
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html

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