2025年12月27日(日本時間深夜)、サウジアラビア・リヤドで開催された「THE RING V: NIGHT OF THE SAMURAI」は、日本ボクシング界にとって大きな意味を持つイベントとなりました。
世界4団体統一スーパーバンタム級王者・井上尚弥と、階級転向初戦を迎えた世界3階級制覇王者・中谷潤人。2026年5月の東京ドームで夢の日本人頂上決戦が予定されていた2人の王者が、同じ興行で揃ってリングに上がりました。
しかし、この夜の結果はボクシングファンを興奮させると同時に、大きな疑問符も残すものとなったのです。
井上尚弥 vs アラン・ピカソ:完勝も、KO奪えず
試合結果
判定3-0で井上尚弥が勝利
- スコア:120-108、119-109、117-111
- 世界戦27連勝(歴代単独1位)
- 6度目の4団体統一王座防衛
試合内容
井上は2回開始からコンビネーションで一気に攻勢に出て完全に主導権を握り、6回からも連打で追い込んでプレッシャーを強めましたが、KOこそならず最後まで集中を切らさずに完勝しました。
判定は大差での井上の勝利でしたが、事前にKOを公言していただけに、本人も納得していない様子でした。
井上本人のコメント
試合後、井上は「今夜よくなかったです。なんだろうな、よくなかった」と繰り返し反省の弁を口にしました。「4戦こなすことができて、満足はしてますけど、ちょっと疲れました。ゆっくり休みます」と、年間4試合の強行軍による疲労感も覗かせています。
それでも世界戦27連勝という偉業を達成し、ジョー・ルイスやフロイド・メイウェザーを抜いて歴代単独1位に。モンスターの強さは健在でした。
中谷潤人 vs エルナンデス:まさかの大苦戦
そして、この夜の最大の波乱となったのが中谷潤人の試合でした。
試合結果
判定3-0で中谷潤人が勝利
- スコア:115-113、115-113、118-110
- スーパーバンタム級転向初戦
- 32連勝(国内新記録)
試合内容
中谷は前半をリードしましたが、5回を境にエルナンデスのパンチが徐々に決まり出し、中盤から激しいパンチの応酬となり、根競べのような様相を呈しました。
右目を腫らしながらも堪えきった中谷ですが、判定の瞬間には会場からどよめきの声が上がりました。
海外メディアの辛口評価
この試合に対する海外メディアの評価は極めて厳しいものでした。
米スポーツ専門局ESPNは「中谷は右目が腫れて完全にふさがった状態で12ラウンドの激戦を戦い抜いた。エルナンデスの猛攻と手数に苦しみ、キャリアで最も厳しい戦いを強いられた。公正な結果を期するならば、ドローだったかもしれない。それどころか、エルナンデスが勝っていてもおかしくない試合だった」と報道しました。
また、米誌スポーティングニュースは「井上と中谷はともにタフなメキシカンを破り、来年の直接対決への道筋を残した。だが、その勝ち方の差」と、2人の内容の違いを指摘しています。
採点への疑問
特に118-110という8ポイント差をつけたジャッジに対しては、「バカげた採点」「あまりにも甘すぎる」といった声が相次ぎました。実際に試合を見た多くのファンも「負けてもおかしくなかった」という印象を持ったようです。
ボクシングファンの反応:「井上と試合する意味あるの?」
SNS上での厳しい声
この中谷の試合内容を見たファンからは、厳しい意見が相次ぎました。
「負けたかと思った…」 「井上戦、白紙かな」 「これじゃ勝ち目ない」 「スーパーバンタム級のパワーに対応できてない」
格の違いが鮮明に
同じ夜、同じ階級(スーパーバンタム級)で試合をした結果、井上尚弥と中谷潤人の間には大きな壁があることが浮き彫りとなりました。
井上は相手を圧倒し続け、判定ながらもフルマークに近いスコアで完勝。一方の中谷は、格下の相手に大苦戦し、顔を腫らして辛勝。この対比は、あまりにも鮮明でした。
来年5月の東京ドーム決戦はどうなる?
当初の計画
2026年5月2日、東京ドームでの開催が予定されていた井上尚弥vs中谷潤人。日本ボクシング史上最大のドリームマッチとして、ゴールデンウィークを盛り上げる興行となるはずでした。
試合前から「白紙化」の可能性
実は、試合前日の計量時に衝撃的な発言がありました。井上の大橋会長が「来年5月は中谷戦ではなく、フェザー級に上げて世界5階級制覇に挑む可能性もある」と明言したのです。
この試合結果を受けて
中谷がスーパーバンタム級に転向したのは来年5月の井上戦を見据えたものでしたが、この苦戦により状況は一変しました。
試合後、井上は「今夜お互い無事勝利できたということで、大橋会長といろんな方向性を含め話していきたいと思います。日本のファンのみなさん、期待はしていてください」と語りましたが、中谷戦を明言することはありませんでした。
フェザー級転向の可能性
日本男子初の5階級制覇を目指すフェザー級転向。これは競技的には大きな挑戦であり、井上のレガシーをさらに高めることになります。
しかし、日本のファンが最も見たいのは、やはり中谷との日本人頂上決戦であることは間違いありません。
まとめ:中谷は井上の壁を越えられるのか?
今回のサウジでの試合は、多くのことを示唆しました。
井上尚弥は依然として圧倒的な強さを誇っている。年間4試合という強行軍をこなし、KOこそ逃したものの、判定で大差をつけて完勝。世界戦27連勝という史上最多記録を樹立しました。
一方、中谷潤人は階級転向の洗礼を受けました。バンタム級では圧倒的だった中谷も、スーパーバンタム級では相手のパワーとタフネスに苦しみ、顔を腫らしての辛勝。井上との実力差は、想像以上に大きいのかもしれません。
今後の展望
2026年5月の東京ドーム。そこで井上vs中谷の夢のカードが実現するかどうかは、まだ不透明です。
もし実現すれば、それは日本ボクシング史上最大の一戦となることは間違いありません。しかし、この日の試合内容を見る限り、多くのファンが「本当に中谷が井上に勝てるのか?」「井上と試合する意味があるのか?」という疑問を抱いたことも事実です。
中谷本人は試合後、「世界チャンピオンを目指してこの階級に転向したので、そのチャンスをいただけるならしっかり仕上げます」と語りました。この苦戦を糧に、さらなる成長を遂げることができるのか。
2026年5月まであと5ヶ月。中谷潤人の再起と、井上尚弥の決断に注目が集まります。
この試合を通じて、改めて井上尚弥の偉大さが証明されました。同時に、中谷潤人がそのレベルに到達するためには、まだ超えるべき壁があることも明らかになりました。果たして夢の日本人頂上決戦は実現するのか、そして実現したとき、中谷は井上に挑戦できるだけの力をつけているのか。ボクシングファンにとって、目が離せない展開が続きそうです。

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