みんな大好きTレグ(制御性T細胞)。免疫を抑える機能がある細胞ですね。
腸内細菌を整えることでTレグ細胞が活性化されるので、アレルギー体質が治る可能性があったりします。私はそれでかなりアレルギーが治りました。
で、Tレグ細胞の第一人者、坂口志文大先生の『免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか』を読んだので、興味深かったところを記事にてメモします。
Tレグについて一般人が知っておきたいこと【免疫の恒常性の維持に関与】
「免疫力を上げよう!」
という言葉は誰もが一度は耳にしたことがあるはずでうs。
でも本当にそれ、正しいのでしょうか?
免疫学的にいうと微妙です。なぜなら、強すぎる免疫力は、自分の細胞まで攻撃しちゃうからです。その結果、
- 花粉症
- アレルギー
- 自己免疫疾患
などに陥っちゃうわけです。
免疫で大切なのは、恒常性です。ようはバランスです。
外敵が侵入してきた時には免疫力を上げ、外敵が少ない時は免疫力を下げるというバランス力が大切なのです。
それで、免疫力を抑えるのに一役買っているのが『Tレグ(制御性T細胞)』です。仮にTレグが作れないとすると、全身の臓器に重篤な自己免疫疾患が生じてしまいます。
以上、一般人が知っておきたいTレグのお話でした。「もっと知りたいぜ!Tレグが発見された経緯、Tレグをつくる遺伝子、マーカーを知りたいぜ!」というマニアックなお方は、どうぞこの本をお読みください。
がんとTレグ(制御性T細胞)
個人的に興味深いなーと思ったところが、『がんとTレグ』の関係性です。
なんと、がん細胞はTレグを使って免疫応答を制御することにより、腫瘍を大きくしているのです。(がん組織には、Tレグが過剰に浸潤していることが研究で分かっています。がん組織に浸潤している細胞の30から40%、場合によっては80%近くもがTレグで占められることもあるそうです。)
なぜがん細胞がTレグを使って免疫反応を抑えられるのかと言いますと、ようはがん細胞はもともと自分の細胞だったからです。自分の細胞が変異してがん細胞になっているため、すべての性質が変わっているわけではありません。違う性質もあれば、似ている性質もあるのです。
がん細胞と正常細胞の免疫学的な違いは、作られる自己抗原の量や質が違うだけなのである。
細菌やウィルスなどの外からきた病原体を攻撃するために、免疫応答は進化してきました。だから『もともとある自分の細胞(自己由来の抗原)』に対しては、うまく免疫が働かないのです。(自分の細胞を攻撃しちゃうとやばいから)
皮肉なことに、免疫細胞ががん細胞をやっつけようとすると、Tレグが「おいおい、それ自分の細胞やん。攻撃したらあかんよ。」と働いてしまい、結果としてがん細胞の増殖を手助けしてしまいます。
Tレグを活用したがん治療
がんとTレグの関係性が分かってきているため、『Tレグを活用したがん治療』の研究がすすめられています。
- Tレグを枯渇させるか、Tレグの抑制作用を弱める
- Tレグを目印にして、近赤外線をあてがん細胞をやっつける(2016年には、マウスで実験が成功)
おわりに
いやー、Tレグっておもしろいですね。まさかがん細胞がTレグを利用していたとは…。全然知らなかったことなので、超驚きました。
というわけで、Tレグについて詳しく知りたいぜ!というお方は、ぜひ読んでみてください。面白いと思います。
参考までに。それでは!
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