腸内細菌系の本を読んでいると、毎度登場してくる『便微生物移植』。漢字の通りなのでこれを見ると「え!?」と思いそうなのですが、効果は本物らしいです笑
今回の記事も前回の『腸内細菌は免疫機構をくぐり抜けどうやって腸内で暮らすようになるのか?IgA抗体が関与』に引き続き、『腸内フローラ10の真実』から気になったことを書いていきたいと思います。
1 便微生物移植とは?
腸内でクロストリジウム・ディフィシルという菌だけが異常繁殖すると、『偽膜性大腸炎』という病気になります。そのため別名『クロストリジウム・ディフィシル感染症』とも呼ばれます。
日本では馴染みない病名ですが、欧米では患者数が急増しており、アメリカでは年間1万人を超える死者が出ています。死者です。患者数ではありません。めちゃ多いのです。
ただし、このディフィシル菌は健康な人の腸内にもいます。だから病原菌とは言えないのですが、この細菌だけが異常に増殖するとやばいのです。
1.1 抗生物質の使いすぎ問題
じゃあなんでこの菌だけ異常増殖するの?という話ですが、ここに抗生物質使いすぎ問題が関係していると言われています。ディシフィル菌は抗生物質が効かない『耐性菌』になりやすい性質を持っており、抗生物質をなんども使っていると他の菌は死に、耐性を獲得したディシフィル菌のみが生存し、異常増殖を始めると言うわけです。
1.2 さらに強い抗生物質という悪循環のスタート
この病気を治療にするには、さらに強い抗生物質を使うしかありません。しかし、耐性菌を獲得しやすい菌を完全に殺す事は難しいです。だから再発を繰り返し、ついには手の施しようのないくらいな耐性菌になってしまいます。
1.3 画期的な治療法で92%の成功率
そんな中、画期的な治療法が登場しました。それが『便微生物移植』です。健康な人の大便を腸内に流し込むものです。「え?」と思うでしょうが、この治療法の効果は絶大で、なんと92%の成功率を誇るのだとか笑(ちなみに、ちゃんと濾過しますよ!)
アメリカ消化器学会のガイドラインでは、再発を繰り返す患者に対して便微生物移植を「推奨する」としています。ですから、すでに標準治療になっているのですね。
ちなみに、善玉菌と呼ばれるような細菌を単体で飲んでも、ほとんど効果がないそうです。重要なのは「多様性」。多様性があってこそ、ディフィシル菌の繁殖を押さえ込むことができると考えられています。
1.4 ウンチを売る時代が来るかも?
健康的なうんちで人の命を救える。ということは、いつかウンチビジネスが来るかもですよね。これだけ腸内細菌が大切だと叫ばれているのであれば、理想的な腸内環境を持つ人のウンチを体内に入れるのが一番手っ取り早い健康法なのかもしれません笑
下手に効果のあるかわからないサプリメントに手を出すよりは、超健康体の人を見つけて「あの、ウンチください!」というのが健康の近道のような気もしてきます笑
1.5 移植したとしても維持が難しい
理想の腸内フローラを移植したとしても、理想の腸内フローラを維持するのは難しいです。なぜなら食生活が違うからです。
腸内フローラの移植によって一時的には理想の腸内フローラに近づいたとしても、元の食生活を続けていれば理想の腸内フローラを維持することはできません。やはり健康的な食生活をしろ、と言うことなのですね。
1.6 理想の腸内フローラは人によって違う
理想の腸内フローラという言葉を使いましたが、人によって理想の腸内フローラは異なると考えられています。なぜなら文化によって、食べるものが違うからです。
1.7 インスリン感受性も便移植で治療可能?
理想の腸内フローラは人によって異なると書きましたが、腸内フローラの多様性が低下している人には、とりあえず多様性のある腸内フローラを移植するのが効果的かもしれません。
オランダの研究チームが行った、メタボリックシンドロームの患者への便移植の研究です。この臨床試験は、メタボ患者18人に対して行われました。
- 9人には「痩せた人の便」
- 残りの9人には「メタボ患者自身の便」
の2つのパターンに分けて、便移植を行いました。
6週間後、被験者のインスリン感受性を測定しました。その結果、痩せた人の便を移植された人はインスリン感受性が回復していました。(一般にメタボ患者はインスリンの感受性が低下している)
つまり、便移植は糖尿病の予防・治療に有効であることが示唆されました。
おわりに
なかなか衝撃的な内容だったと思います。いや〜ウンチの色した漢方薬と思えばいいのかもしれませんね笑!
人のウンチを体内に入れたくない人は、むやみやたらに抗生物質を使うのはやめましょう。また、素人考えで自分で便移植をなさらぬように。海外のサイトなどには「自分で便移植をする方法」なんてのがあるそうです。とても危険な行為ですので、絶対に自分でやらないでください。
参考までに。それでは!
*腸内環境の大切さを勉強するためのオススメ本
今までに多くの『腸内環境の大切を伝える本』を読んできました。その中でもイチオシなのがアランナ・コリン先生の『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』になります。
分厚くて少々読みにくいかもしれませんが、腸内環境の大切さを深く知っておく上で外せない一冊になります。
「もうちょっと読みやすい本を頼むぜ!」という方のためオススメできる本は、『腸科学』になります。こちらは読みやすいと思います。
どちらのほんも「腸内細菌スゲー」と思うこと間違いなしです!
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