『和』の文化を作り上げた日本。今では和食といえばヘルシーというイメージから、欧米圏でも愛される食になっています。
そんな和食にちなんだ腸内細菌が日本人に特有に生息していたりします。文化によって腸内細菌まで変わってくるって面白い話ですよね。ということで今回の記事では、日本人特有の腸内細菌について書いていきます。
1 海藻を消化する腸内細菌を持つ日本人
2010年、とある科学者がポルフィラナーゼと呼ばれる酵素を研究していました(Bacteria of the human gut microbiome catabolize red seaweed glycans with carbohydrate-active enzyme updates from extrinsic microbes.)。
ポルフィラナーゼは、海苔などの海藻に含まれる多糖類を分解します。
海の中にいる細菌が、海藻を栄養源にするためにこの酵素を作る遺伝子を持っているのなら分かります。しかし日本人のお腹の中にもいたのです。日本人の腸内フローラを遺伝子解析すると、なんと腸内細菌にもポルフィラナーゼをつくる遺伝子を持っていました!(北アメリカ人の腸内細菌はこの遺伝子を持っていなかった)
これは他の国の人の腸内フローラには見つかっていないため、「スシ・ファクター」などとも呼ばれています。日本人の腸内には、海藻を消化できる細菌がいるのですね。海に囲まれて暮らす日本人は、いつの頃からか海藻を消化できる細菌を腸内に住まわせるように、共進化してきたみたいです。
1.1 適応した腸内細菌
なぜ人の腸内に海藻を分解できる腸内細菌が生息しているのでしょうか?これは日本人が海藻を食べているうちに、腸内細菌が海藻を栄養源とするために適応(変異)したと考えられます。
もしくは海藻に付着している細菌を食べて、それらの細菌が大腸に生息している常在菌に遺伝物質を伝えた可能性が考えられます。これが意味することは『外部の環境が腸内環境を変える』ということです。
さらに研究が進めば、文化の違いにより、ヒトに生息している腸内細菌も違うということが分かってくるでしょう。きっと欧米人のあのガタイの良さは、タンパク質の分解吸収が得意な腸内細菌がいるはずです笑。
1.2 日本人の腸内細菌は炭水化物の消化が得意
海藻以外にも、『炭水化物』の消化吸収が得意なのが日本人の腸内細菌の特徴です。(→The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness)
弥生時代から稲作を始めて、米を主食にした日本人ならではの腸内細菌な気がしますね。この論文によると、日本人に特に多い腸内細菌が『ビフィドバクテリウム属』であり、これが炭水化物を消化するための糖質加水分解酵素を多く持っているということです。
1.3 外国の腸内細菌は〇〇が多い
日本人の腸内細菌と大きく違うのが中国人の腸内細菌で、日本人に多いビフィドバクテリウム属は少なく、バクテロイデス属が多いという特徴が見られました。中国人の腸内細菌環境と似ているのが、肉をよく食べるアメリカなどの欧米圏の腸内細菌環境でした。
といっても、欧米圏にも日本人の腸内細菌環境と似ている国民(オーストリア・フランス・スウェーデン)がいます。どうやら腸内細菌環境が決まるのは、食生活だけではなさそうですね。
おわりに
今回の記事では日本人特有の腸内細菌について書いてきました。日本人は、海藻類と炭水化物の消化吸収が得意みたいです。文化や環境の違いによって、人の腸内細菌環境は違ってくるって面白いですよね。
同じ食べ物でも、人種によって吸収率が変わってくるというのは興味深いです。だから、外国から入ってくる健康サプリやスーパーフードが自分の体に適しているかなんてわからないのです。
最近では糖質制限ダイエットなんてのが流行っていますが、これはアメリカからきた流れですし、アメリカ人は日本人が考えられないくらいの糖を摂取しています。だから、このダイエット法をそのまま日本人に適用していいかというのはちょっと微妙なんですよね。だって日本人には炭水化物の消化吸収に役立つ腸内細菌がいるんですから。
仮に糖質制限して炭水化物を減らしていくと、腸内細菌に栄養が届かないことにもつながります。そうなると、この腸内細菌たちの増殖は抑えられていき菌数は減っていきます。それがどんな悪影響を与えるのかは不明です。
肥満の人はともかく、普通の体型の人が糖質制限ダイエットを執拗になることは私としては「う〜ん」って思います。過度な糖質制限をするよりも、まんべんなくいろいろなものを食べる方が健康的なはずです。参考までに。それでは!
*腸内環境の大切さを勉強するためのオススメ本
今までに多くの『腸内環境の大切を伝える本』を読んできました。その中でもイチオシなのがアランナ・コリン先生の『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』になります。
分厚くて少々読みにくいかもしれませんが、腸内環境の大切さを深く知っておく上で外せない一冊になります。
「もうちょっと読みやすい本を頼むぜ!」という方のためオススメできる本は、『腸科学』になります。こちらは読みやすいと思います。
どちらのほんも「腸内細菌スゲー」と思うこと間違いなしです!
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