最近よく聞く「プロバイオティクス」。腸にいいと聞いて、ヨーグルトや乳酸菌飲料を選んでいる人もいると思います。
でも、食べた菌は、そのまま腸に住みつくのでしょうか。もし出ていってしまうなら、食べる意味はあるのでしょうか?
結論からいうと、菌がずっと腸に住みつかなくても、体に役立つ可能性はあります。ただし、効果は菌の種類や、何のために取るかによって違います。 抗菌薬に伴う下痢の予防には有望な結果がある一方、急性胃腸炎を早く治す効果や、R-1によるインフルエンザ予防は、期待どおりの結果ばかりではありません。
今回は、食べた菌が腸で何をしているのかをたどりながら、ヨーグルトや乳酸菌飲料にどこまで期待できるのかを見ていきます。
プロバイオティクスとは?乳酸菌なら何でも同じではない

世界消化器病学会(WGO)の2023年のガイドラインでは、プロバイオティクスを、十分な量を取り入れたときに健康上の利益をもたらす生きた微生物と説明しています。乳酸菌やビフィズス菌の一部のほか、酵母が使われることもあります。
「生きた菌が入っている食品」というだけで、どんな健康効果でも期待できるわけではありません。
ここで大切なのが、菌株(きんかぶ)です。同じ種類の菌を見分けるための、背番号のようなものだと思うと分かりやすいです。菌の名前の後ろに付く「GG」や「DN-114 001」などが、それに当たります。
ある菌株で便通に変化があったとしても、別の菌株で同じ結果になるとは限りません。同じ菌株でも、量や組み合わせ、食べる人、調べる症状が違えば、研究の結果も変わります。
つまり、「乳酸菌が入っているか」からもう一歩進んで、どの菌を、誰が、何のために取った研究なのかを見るのがポイントです。
食べた菌は、ずっと腸に住み続ける?

私たちの腸には、もともと多くの微生物が暮らしています。食べ物を分解し、その途中でできた物質を別の菌が利用するなど、菌同士のつながりもあります。
この土台については、腸内細菌は何個いる?食べ物を分け合う「菌との共生」の話で詳しく説明しています。
そこへ食べ物やサプリメントの菌が入ってきても、必ず新しい住人になるわけではありません。長く定着せず、取り続けるのをやめると検出されにくくなる菌も多くあります。
「だったら、ずっと住みつく菌のほうがよさそう」と思うかもしれませんね。
ただ、効果が出るために、必ずしも長く住みつく必要はありません。腸を通る間にも、物質を作ったり、ほかの微生物や腸の細胞に働きかけたりする可能性があるからです。もちろん、「通過するだけで必ず効く」という意味ではありません。
Zmoraらの2018年の研究でも、取り入れた菌が腸の粘膜にどの程度とどまるかには、個人差や腸の場所による違いが見られました。さらに、便から菌が見つかっても、それだけでは粘膜への定着の様子を判断できませんでした。
便から見つかること、長く定着すること、体調がよくなることは、それぞれ別の話なんですね。
腸のバリアや免疫に、どう関わるのか

腸の表面には粘液があり、その下には上皮細胞が並んでいます。これらは、腸の内容物と体の内部を隔てるバリアです。
では、食べた菌はそこにどう関わるのでしょうか。WGOのガイドラインでは、次のような仕組みが紹介されています。
- 病原菌と、栄養や居場所を取り合う。 腸の表面に付着する場所などをめぐって競い、病原菌が増えたり、居ついたりするのを妨げる働きです。
- 周りの環境を変える物質を作る。 菌が作る乳酸や、酢酸などの短鎖脂肪酸は、腸内の酸性度や、ほかの微生物・腸の細胞の働きに関わります。何を作るかは菌によって違います。
- 腸のバリアや免疫に働きかける。 腸の表面を覆う粘液、上皮細胞同士のつながり、粘膜の免疫反応などへの影響が調べられています。
どの菌にも三つ全部の働きがあるわけではなく、細胞や動物で分かった仕組みが、そのまま人の効果になるとも限りません。「バリアや免疫に関わる」ことと、「食べた人の病気が減る」ことは分けて確かめる必要があるんですね。
そこで、人が実際に飲んだり食べたりした研究も見てみましょう。
子ども638人の発酵乳飲料の研究では
2010年のDRINK試験では、米国の保育施設などに通う3〜6歳の健康な子ども638人を調べました。
使ったのは、L. casei DN-114 001と2種類のヨーグルト用の菌を含む発酵乳飲料です。1日200gを90日間飲むグループと、生きた菌を含まない対照飲料のグループを比べています。
この試験が主に調べたのは、「感染症にあたる症状の発生率」と「病気で普段の活動が変わった日数」の二つです。前者は試験飲料のグループで相対的に約19%低くなりましたが、後者に明確な差はありませんでした。
症状の種類を分けた副次的な評価では、胃腸炎、下痢、吐き気、嘔吐などをまとめた発生率が相対的に約24%低い結果でした。ただし、欠席には明確な差がありませんでした。
これは特定の飲料についての有望な結果ですが、症状は保護者の報告であり、すべてが検査で確かめられた感染症ではありません。また、飲料メーカーの資金提供を受けた研究です。すべての乳酸菌飲料の効果や、腸のバリアが強くなったことまで確かめたわけではない点は、覚えておきたいところです。
下痢には効く?「治す」と「予防する」を分けて考える

下痢といっても、感染性胃腸炎で急に始まるものと、抗菌薬を飲んでいる間に起こるものでは、状況が違います。「今ある下痢を治す」のか、「これから起こる下痢を防ぐ」のか。研究を見るときは、ここも分けて考えたいところです。
まずは、混同しやすい三つを並べてみます。
| 何を調べる研究か | 分かっていること | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 急性の感染性下痢を治す | 主に子どもの研究では、下痢が早く治るかは不確か | WHOは10歳までの子どもの急性水様性下痢に、使わないことを条件付きで推奨。根拠の確かさは低い |
| 抗菌薬関連下痢(AAD)を予防する | 成人・子どもとも、下痢が減る可能性がある | 菌株・対象・研究の質で結果が違う。成人の低バイアス試験だけでは明確な差なし |
| C. difficile関連下痢(CDAD)を予防する | 2025年レビューの38試験では、プロバイオティクス群約1.6%、対照群約3.2% | 根拠の確かさは低い。発症後の感染症の治療とは別 |
AADは抗菌薬の使用に伴う下痢全般です。ここで紹介するCDADの研究は、抗菌薬を使う人のC. difficileによる下痢の予防に注目しています。表の数字はそれぞれ条件の違う研究の結果なので、効果の強さを横並びで比べるものではありません。
急性胃腸炎の下痢を、早く治せるとは限らない
2018年には、急性胃腸炎の幼い子どもを対象に、米国で971人、カナダで886人を調べた二つの大きな試験が発表されました。
米国ではL. rhamnosus GGを、カナダではL. rhamnosus R0011とL. helveticus R0052の組み合わせを5日間使いました。どちらの試験でも、対照群より胃腸炎の重症度や下痢の期間が改善したとはいえませんでした。
2020年のコクランレビューも、偏りのリスクが低い研究を重視すると、48時間以上下痢が続く人の割合はほとんど変わらず、下痢の期間を短くするかは不確か、と評価しています。研究対象の大半は子どもです。
専門家の指針にも違いがあります。欧州の小児消化器分野の2023年の提言は、GG株など一部を使う選択肢を残していますが、推奨は弱いものです。一方、WHOの2024年の指針は、10歳までの子どもの急性の水様性下痢に対して、使わないことを条件付きで勧めています。
「プロバイオティクスなら、どんな下痢でも1日早く治る」とは考えないほうがよさそうです。
抗菌薬に伴う下痢の予防には、有望な結果もある
一方、抗菌薬を使うときの下痢の予防では、役立つ可能性を示した研究があります。
Goodmanらが成人の42試験をまとめた2021年のレビューでは、全体として下痢が少なくなる結果でした。ただし、結果の偏りのリスクが低いと評価された6試験だけに絞ると、明確な差は確認できませんでした。
子どもを対象にした2019年のコクランレビューでは、33試験をまとめた下痢の発症率が、プロバイオティクス群で約8%、対照群で約19%でした。こちらの根拠の確かさは「中等度」と評価されています。ただし、すべての菌や製品が同じように役立つという意味ではなく、子どもに使うか、どの製品を使うかは医師や薬剤師に相談してください。
また、抗菌薬の使用に関連して問題になる「クロストリディオイデス・ディフィシル」という菌による下痢を調べた、2025年のコクランレビューもあります。該当する38試験では、発症した割合はプロバイオティクス群で約1.6%、対照群で約3.2%でした。
これは予防の可能性を示す数字ですが、根拠の確かさは低いと評価されています。使った菌や量、もともとの発症リスクもさまざまで、この数字をそのまま自分や市販のヨーグルトに当てはめることはできません。すでに起きた感染症の治療を置き換える話でもありません。
この感染症の予防については、専門家の指針でも推奨が分かれています。抗菌薬と一緒に使うかどうかは、医師や薬剤師に相談して決めたいところです。
「下痢には全部効く」でも、「下痢には全部無意味」でもなく、どんな場面の、どの製品の研究なのかが大事なのです。
下痢が出ているときは、水分補給と必要な受診を優先
下痢のときに優先したいのは、失われる水分を補い、脱水を防ぐことです。飲める状態なら、少量ずつこまめに補給します。
下痢や嘔吐に伴う脱水には、水分と電解質を補う経口補水液が使われます。利用する際は医師や薬剤師などに確認し、ナトリウムやカリウムなどの摂取を制限されている人は、特に主治医に相談してください。
水分が取れない、尿がかなり少ない、ぐったりしている、血便や強い腹痛があるときは、食品やサプリメントで様子を見続けず、速やかに医療機関に相談してください。 特に子どもでは、救急受診が必要なサインです。
かぜやインフルエンザにも役立つ?R-1の研究を見てみる
腸に取り入れた菌が、腸以外の症状に関わる可能性も調べられています。
2022年のコクランレビューでは、プロバイオティクスによって、かぜなどの上気道感染症にかかる人や回数が減る可能性が示されました。ただし、使った菌株も対象者もさまざまで、結果によって根拠の確かさにも違いがあります。
では、よく耳にするR-1の乳酸菌はどうでしょうか。
R-1で知られるOLL1073R-1を使ったヨーグルトの研究には、次のような違いがあります。
| 研究と対象 | 何と何を比べたか | 主な結果 |
|---|---|---|
| 2010年の報告:高齢者57人と85人の二つの研究 | ヨーグルト90g/日と牛乳100mL/日を、8週間または12週間 | 二つをまとめると、ヨーグルト群でかぜにかかるリスクが低かった |
| 2019年の報告:女性の医療従事者961人 | ヨーグルト飲料112mL/日を16週間飲む群と、飲まない群 | インフルエンザ発症率は7.5%対7.7%。明確な差なし |
高齢者のかぜについては期待できる結果ですが、規模は小さく、比較相手も牛乳です。この2010年の報告は、ヨーグルトを製造・提供した明治乳業に所属する研究者によるものです。2019年の試験も、同じ見た目の対照飲料ではなく、飲まないグループとの比較でした。
一部の免疫の指標が変わっても、インフルエンザの発症が減ったとはいえなかったことは大切です。
かぜとインフルエンザ、高齢者と働く世代、免疫の指標と病気の発症。似た話に見えても、比べているものが違います。
ヨーグルトの研究には面白い結果がありますが、「R-1を飲めばインフルエンザを防げる」と一足飛びに考えないことが大切ですね。
ヨーグルトの菌が乳糖の消化を助ける働き

身近な働きとしては、ヨーグルトの生きた菌による乳糖の消化の助けもあります。EUで認められている表示は、乳糖を消化しにくい人が、そのヨーグルトや発酵乳に含まれる乳糖を消化しやすくなる、というものです。指定された二つの菌(L. bulgaricusとS. thermophilus)が、生きた状態で1gあたり合計1億CFU(培養して増える菌の数を示す単位)以上含まれることが条件です。どの製品でもよい、あらゆるお腹の張りに効く、という話ではありません。
抗菌薬で変わった腸内細菌は、二度と戻らない?
抗菌薬で腸内細菌の構成が変わることはありますが、「一度変わったら二度と戻らない」とはいい切れません。
Pallejaらの2018年の研究では、健康な男性12人に3種類の抗菌薬を4日間投与しました。その後、全体の構成は約1か月半で投与前に近づきました。一方、一部の菌が半年後も検出されないなど、残る変化もありました。すべての抗菌薬に同じ経過を当てはめることはできませんが、回復する面と長く影響が残る面の両方があるわけです。
だからといって、「菌が減った分を、好きなプロバイオティクスで埋めれば元通り」と分かったわけではありません。
Suezらの2018年の研究では、抗菌薬を使った後に特定の11菌株を含む製品を取ると、自然な回復に任せた場合より、もとの腸内細菌の構成に近づくまで時間がかかりました。人での検討は小規模で、特定の抗菌薬と製品を使った結果なので、すべてのプロバイオティクスが回復を妨げるとはいえません。それでも、「菌を足せば必ず早く元に戻る」とは考えにくいことが分かります。
抗菌薬に伴う下痢を予防できるかと、腸内細菌がもとの状態に戻るかも、別の問題なのです。
抗菌薬と腸内細菌については、抗生物質を飲むと腸内細菌はどうなる?回復・子どもの健康・食品添加物を研究から考えるで詳しく説明しています。
人によって違うからこそ、目的を決めて選ぶ
腸内細菌の構成や食生活、体調は人によって異なります。食べたときの感じ方が違っても、不思議ではありません。
お腹の痛みや便通の変化が続く過敏性腸症候群(IBS)でも、症状がよくなる可能性は研究されています。ただし、どの菌株を誰に使うかはまだ一様ではなく、日本の指針と海外の指針でも推奨の判断が分かれています。
「人によるから、何でも試せばいい」というより、何を期待しているのかを決めておくと、変化を見つけやすくなります。
普段の食品として取り入れるなら、次の点を目安に考えてみてください。
- 目的をはっきりさせる。 便の状態が気になるのか、食品として楽しみたいのかを分ける。「免疫力が上がった気がする」だけでは、効果を判断しにくくなります。
- 表示を確認する。 菌の種類・菌株、期待できる働き、目安量、保存方法を見る。菌数が多いほど、種類が多いほど、効果が高いとは限りません。
- 一度にいろいろ増やさない。 食べた量と、お腹の張りや便の状態を見てみる。合わない症状が出たら、無理に続けないようにしましょう。

表示には制度の違いもあります。特定保健用食品(トクホ)は食品ごとに国の審査と許可を受けますが、機能性表示食品は事業者の責任で根拠などを届け出る仕組みで、国が個別に有効性や安全性を審査したものではありません。「何に対する、どんな働きの表示なのか」まで読むと、期待を広げすぎずに選べます。
ヨーグルトでお腹が張ったとしても、原因が菌だけとは限りません。乳糖などの成分や、一度に食べる量が関わる場合もあります。食品とお腹の張りの関係は、低FODMAP食とは?お腹が張る仕組みと食品例・試す期間・戻し方をやさしく解説で扱っています。食事をむやみに制限するためではなく、原因を整理する参考にしてください。
重い病気がある場合は、自己判断で使わない
健康な人で使われてきた食品や製品でも、誰にでも同じように安全とは限りません。免疫の働きが低下している人、重い病気で治療中の人、早産児などでは、生きた菌による感染症が問題になることがあります。
米国FDAも2023年に、入院中の早産児へのプロバイオティクス製品の使用について、重い感染症などの危険を警告しています。これは健康な子どもが普段ヨーグルトを食べる場面とは、分けて考える必要があります。
重い病気がある場合などは、自己判断で製品を追加せず、治療を担当する医師に相談してください。
まとめ:腸に住みつくかより、何が変わるかを見る
プロバイオティクスは、長く定着しなくても腸で働く可能性があります。腸のバリアやほかの微生物との関わりを通して、人の症状に影響するかもしれない。そこが面白いところですね。
ただ、「腸にいい菌」という大きなくくりだけでは、何が期待できるかは分かりません。
どの菌株を、誰が、どのくらい取り、何が変わったのか。 そこまで見ると、有望な結果と、まだ分かっていないことを分けやすくなります。
ヨーグルトをおいしく食べる楽しみと、特定の病気を防ぐ効果への期待は分けて、無理なく取り入れていきたいですね。
参考までに。それでは!
参考資料
定義・定着・腸での働き
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安全性・脱水時の対応
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消費者庁「経口補水液について」。
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埼玉県立小児医療センター「とっさの家庭看護」。
https://www.saitama-pho.jp/scm-c/kenkojoho/kodomojoho/05-01-01.html


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