堀滋(ほりしげる)さんの『歯のメンテナンス大全』を読んだので、この記事にて学んだことをメモしていきます。いやはや、もっとはやくに読みたかった系の本ですよー。
1. 歯を守るために知っておきたいこと
それでは以下に『歯のメンテナンス大全』を読んで、「もっとはやくに知っておけば…歯を守れたのに」ということを書いていきます。
ちなみにこの本を読む前から、
- フロスを使う
- 間食はできるだけ避ける
ということはしていたので、ど基本の内容は割愛します。
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1.1. 歯ブラシの使い方
ゴシゴシと磨くのはNGです。なぜかというと、歯茎にダメージを与えてしまうからです。
歯ブラシの持ち方は、鉛筆を持つような持ち方をします。そして歯ブラシの毛先の弾力を使って歯を磨いていきます。毛先の弾力が重要なので、歯ブラシは1ヶ月を目安に交換しましょう。
また、歯と歯茎の境目は、45度に当てて磨きましょう。
1.2. 食後すぐに歯を磨くべき?
食後すぐの歯磨きは、専門家でも意見が別れているところです。
ただし、食生活などが原因で歯のエナメル質が溶け出す「酸蝕歯(さんしょくし)」になっている場合は、食後すぐに歯磨きをするのは危険です。なぜかというと、歯ががすり減るからです。酸蝕歯の人は、食後30分から1時間経ってからの歯磨きをしましょう。
1.3. 舌は磨いた方がいい?
舌の表面で細菌が増殖し、それが口臭の原因になっている可能性があります。ですから舌も磨きましょう。ただし磨きすぎはNGです。1日1回までです。
また細菌の付着量が多い、『朝』に舌磨きをするのがオススメです。
1.4. 甘くない炭酸水も飲み過ぎは危険
無糖の炭酸水も、飲み過ぎは歯にダメージを与えます。なぜかというと炭酸水は中性ではなく酸性だからです。
歯の表面のエナメル質は、口の中がpH5.5を下回り、酸性に傾くと溶け始めることがわかっています。水代わりに炭酸水を飲むような生活をしていると、歯にダメージを蓄積させてしまうので注意しましょう。
1.5. キシリトールはWHOも効果を認めている
キシリトールは歯を守る甘味料として知られています。キシリトールは甘味料なのですが、虫歯菌が酸を作る餌とはなりません。そして唾液の分泌と歯のエナメル質の再石灰化を促す作用があります。この効果は確かな証拠があり、WHOをキシリトールの虫歯予防効果を認めています。
1.6. ココナッツオイルプリングのススメ
こちらの本ではココナッツオイルプリングをすすめていました。ココナッツオイルプリングとは、ココナツオイルで口をすすぐ健康法です。
病原菌の細胞膜の主成分は油で、病原菌が出す毒素も油を含んでいるため、オイル(油)で口の中をすすぐことで、オイルと一緒に病原菌や毒素を洗い流すことができるというわけです。
植物性のオイルではなんでもいいのですが、本書ではココナッツオイルをオススメしていました。なぜかというと、ココナッツオイルには強い抗酸化作用と抗炎症作用があるからです。
オイルプリングのやり方↓
- オイル大さじ1を口に含む
- 含んだオイルを口の中で転がす
- 5〜10分間オイルを転がし、唾液と馴染ませる
- ティッシュなどに捨てる(流しに捨てるとオイルが固まって詰まる可能性があるから)
1.7. 洗口液・うがい薬はオススメしない
オイルプリングで病原菌や毒素を出さなくても、洗口液の方がいいのでは?という疑問があるかもしれません。しかし、洗口液はオススメできません。
なぜかというと、菌を見境なく殺すからです。口の中の菌は腸と同じように、
- 「歯を守る善玉菌」
- 「虫歯菌や歯周病菌をもたらす悪玉菌」
- 「どちらが優勢な方に加勢する日和見菌」
の3種類があることがわかっています。
洗口液を使ってしまうと、善玉菌も殺してしまいます。腸と同じように口の中も菌のバランスが大切なのです。ですから、洗口液よりオイルプリングの方がいいというわけです。
ちなみに洗口液だけではなく、うがい薬も同様に殺菌力がある薬剤が含まれているため、口腔内の細菌バランスを崩す恐れがあります。
1.8. 果糖は虫歯にならないは嘘
歯磨きをしないと、歯がヌルヌルしてきます。このヌルヌルは、虫歯菌がつくる不溶性グルカンのせいです。そしてこの不溶性グルカンの中には細菌が詰まっています。
以前はこの細菌のカタマリをプラークと呼んでいましたが、プラークは不溶性グルカンと一体になっていることが分かり、現在ではまとめて「バイオフィルム」と呼んでいます。
果糖は虫歯菌が作り出す不溶性グルカンの材料にならないため、「果糖は虫歯の原因にはならない」と長年信じられていました。
しかしこれは嘘です。虫歯菌はさまざまな糖質から酸をつくりだし、それが虫歯の原因となります。
- ごはん
- お菓子
- 果物
- はちみつ
などなど、これらはすべて糖質が含まれているため、虫歯のリスクになります。
2. 歯の知識を深掘りする
以下では、もう少し深い歯の内容について書いていきます。
2.1. 日本の歯科治療は遅れている
歯科治療のトップを走っているスウェーデンと日本を比較して、80〜89歳の平均の歯の残存本数を見てみると↓
- 日本:約15本
- スウェーデン:約21本
と、6本もの差があります。
6本というのは大きな差です。なんせ歯の本数は親知らずを入れて28本しかありませんから。
2.2. 歯周病を放置すると失われるのは歯だけではない
歯周病を放置していると、歯が失われます。歯周病の恐ろしさはそれだけではありません。
歯周病を放置するということは、慢性的に細菌が歯茎周辺にいるということです。ということは、常に免疫細胞との戦いが行われることになるので、慢性炎症が生じます。
慢性炎症は、
- 認知症
- 肺炎
- 糖尿病
- 狭心症
- 心筋梗塞
など、さまざまな病気のリスクにつながっています。歯周病は歯だけの問題ではないのです。
2.3. ジンジバリス菌が多くの病気に関与しているかも
歯周病の原因の代表格は『ジンジバリス菌』という菌です。ジンジバリス菌はエサであるタンパク質を分解するために酵素を作り出します。酵素の1つにジンジパインという酵素があり、これが高い病原性を持ち、歯周病を急速に進行させます。
ジンジバリス菌は歯周病に関与しているだけではありません。細胞から細胞へと移動し、歯肉の血管を通して全身に回りやすいことが分かっています。
血管壁に付着した血液などのカタマリのなかにジンジバリス菌がいる割合が多く、ジンジバリス菌は動脈硬化への関与が指摘されています。
また、認知症になっている患者さんの髄液からもジンジバリス菌が検出され、認知症との関与も疑われています。マウスの実験では、マウスにジンジバリス菌を感染させると、脳にアミロイドβが溜まることが分かりました。逆に、ジンジバリス菌が作り出す酵素ジンジパインの阻害薬を与えると、アミロイドβが減るという結果も出ています。
動脈硬化や認知症だけではありません。肝臓の病気にも関与していそうなのです。非アルコール性肝炎から肝炎になった患者さんの肝臓からも、ジンジバリス菌が発見されています。
2.3. バイオフィルムの作られ方
バイオフィルムは階層構造になっています。
- まず最初にペリクルという唾液中のタンパク質が歯の表面に付着する(ペリクルは歯のエナメル質から、カルシウムやリンが溶け出す脱灰を抑制する働きがあります)
- その次に、無害な菌(連鎖球菌、ミュータンス菌の仲間)が歯の周辺に付着します(ペリクルは菌のエサにもなります)
- その後、無害な菌が出す分泌物を食べる細菌が付着します。
このように、バイオフィルムは細菌が層状になっています。
バイオフィルムは頑丈なため、歯科のクリーニングで除去するしかありません。
2.4. バイオフィルムの理想のバランス
バイオフィルムには理想のバランスがあります。酸をつくる菌とアルカリをつくる菌のバランスがとれ、pHが中性の状態を示すときです。
また、バイオフィルムは不溶性グルカンがベースとなるため、不溶性グルカンをつくる虫歯菌が多くないことも理想です。不溶性グルカンの多いバイオフィルムは、強い粘着性があるうえに酸性度が高いため、虫歯になりやすい状態です。
不溶性グルカンは、ミュータンス菌が糖を分解したときに作り出す物質です。不溶性グルカンをつくるミュータンス菌を増やしすぎないためには、糖質というエサを与えないことです。つまり、お菓子やジュースを減らすことです。
2.4. 糖質を減らせば歯磨きをしなくても歯周病は改善する
石器時代の食生活を4週間続ける、という実験が行われました。口にするものは、
- 肉
- 自然の果実やハーブ
- 未精製の穀物
などです。
この食生活を4週間続けたところ、なんと歯ブラシや歯間ブラシを使わなくても歯周病の状態が改善していました。現代の糖質たっぷりの食生活こそが、虫歯や歯周病の大きな要因と言うわけです。
おわりに
良本でした。人生のうち、できるだけ早くに読んでおきたい本です。といっても、
- 歯磨きを毎日きちんとする
- 間食はできるだけ避ける
- お菓子ばっかり食べない
- 定期的に歯医者さんに行ってメンテナンスしてもらう
という当たり前のことができている人は、読まなくてもいい本かもしれません。でも、当たり前のことを当たり前にやるのって難しいですよね。お尻を叩いてもらうためにも、この本を一読することをオススメします。
参考までに。それでは!
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