『世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療』を読みました。最高の本でしたね。3人に1人ががんになる時代ですので、全国民が読むべき本なのではないでしょうか。
『最高のがん治療』が良書すぎる。この本を数年前に読めていたら、と思っている人は多いのではないでしょうか。
自分も含めて誰もががんになる時代ですので、とりあえず読んでおきたい一冊ですね。https://t.co/C0YYsLF4qn
— フクヤマ (@hemogurobinn2) May 10, 2020
で、なぜここまで最高の本になっているかというと、専門家3人の知識が集結されているからです。
ということで、いつもながら興味深かったところをメモしていきます。
1 なぜがんになるの?
どうしてがんになるのでしょうか。それは『細胞がエラー』を起こしてしまうからです。ヒトの細胞は37兆個ほどあります。これだけあれば、どこかの細胞がエラーを起こしてしまうのも当然のことなのですね。人生100年時代なので、長生きすればするだけ細胞がエラーを起こす確率も上がってしまうわけです😅
1.1 なぜ細胞はエラーを起こすの?
じゃあなぜ細胞がエラーを起こすかというと、その最大の理由は『遺伝子異常』が起こるからです。
- 不規則な生活
- タバコを吸う
- お酒を飲む
- 紫外線に浴びる
- 排気ガスを吸う
- 単純に細胞が老化して
などなど、生きている限り、体にダメージを与えるものは避けられません。このような遺伝子にダメージを与えるものが積み重なり、遺伝子異常が起こり、細胞ががん化してしまうわけです。
ただ、がん化するメカニズムはがんの種類によって異なります。とても複雑であり、まだまだ解明されていないことも多いのです。p140
1.2 遺伝子異常を起こしてもすべてががん細胞になるわけではない
遺伝子異常を起こすと、必ず細胞ががんになるかと言われると、そうではありません。ヒトの体は優れていまして、がん化を防ぐ免疫システムがあるのですね。
細胞ががん化しそうになると、免疫細胞が「お、この細胞、なんかへんやんけ。やばいことなる前にお掃除しとこ。」というふうに、がん化しそうな細胞をお掃除してくれます。免疫システムは365日、24時間というブラック企業もびっくりなくらいにフル稼働して、わたしたちの体を守ってくれております。ありがたいですね。
ということは、睡眠不足やらカップ麺生活などを続けて、免疫システムが弱るような生活をしていると、免疫細胞ががん化しそうな細胞を見過ごすかもしれないのです。ということで、しっかり食べて、しっかり寝ようぜ!を徹底しましょう。
実際に、なんらかの病気によってこの免疫が破壊されたり、免疫の働きを低下させる薬を服用したりすると、がんの発生率が上がることが分かっています。p140
- Spectrum of Cancer Risk among U.S. Solid Organ Transplant Recipients
- Elevated Cancer-Specific Mortality Among HIV-Infected Patients in the United States.
1.3 がんができる3大要因
細胞の遺伝子異常を起こす、3つの大きな要因があります。
- 外的要因:タバコ・アルコール・ウィルスなど、体内に遺伝子を傷つけるもの
- 遺伝的要因:親から引き継ぐ
- 偶発的要因:偶然に遺伝子異常が起こってしまう(細胞が37兆個もあるので、一定の割合でエラーは起きてしまう)
この3つの要因が、どれほどがんに関わっているかというと↓
色が濃いものほど、要因が関わっているという意味です。これを見ると、がんは偶発的要因が最大の要因であることがわかります。また、脳腫瘍は偶発的要因のみなのですね。
意外にも、遺伝的要因で起こるがんが、とても少ないことに気がつきます。ほんのうっすらしか色がついておりません。女性の乳がん・卵巣がんの一部、家族性大腸がんの一部くらいのものなのです。
- Stem cell divisions, somatic mutations, cancer etiology, and cancer prevention
- The Genetics of Cancer
1.4 「がんになるのは生活習慣のせい」は言い過ぎ
先ほどの図を見ても分かる通り、偶発的要因でがんは起こります。ですから「一部のがんは生活習慣が原因で起こる」が適切な表現なのですね。
たしかに生活習慣を改善すれば一部のがんになる確率を下げることができると考えられていますが、ゼロにすることはできませんし、偶発的要因で起こるがんの発症まで防ぐことはできません。p149
2 がん検診はどうする?
がんの種類によっては、早期に発見し、治療をすれば根治できるものもあります。
2.1 受けるべき5つのがん検診
早期発見しやすいがんは、検診を受けておきましょう。いずれも代表的なやつですね↓
対象部位 | 対象者 | 検査の方法 |
胃がん | 50歳以上の男女 |
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大腸がん | 40歳以上の男女 |
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肺がん | 40歳以上の男女 |
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子宮頸がん | 20歳以上の女性 |
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乳がん | 40歳以上の女性 |
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2.2 進行が速いがんは検診で見つけられないが、抗がん剤がよく効く
急速に進行するがんは、定期的に検診をしても見つけるのが難しいです。毎年どころか、半年ごとに検診を受けていても見つからない場合があります。
しかし検診が有効でないからといって、治療できないことはありません。急速に進行するがんには、抗がん剤がよく効きます。なぜなら、抗がん剤は分裂が活発で、増殖する速度が速いがん細胞に効きやすいからです。
2.3 進行が遅いがんは治療しないほうがいい?
急速に進行するがんもあれば、進行がとても遅いがんや、進行しないがんもあります。代表的なものが、
- 進行が遅いがん:前立腺がん
- 進行しないがん:甲状腺乳頭がん
進行が非常に遅いがんは、転移もしません。ですから、がんで亡くなることもないのです。そのようながんもあるのですね。
で、逆に進行が遅いがんの場合、『過剰診断』や『過剰治療』で体にダメージを与えてしまう問題がでてきます。
2.4 受けなくてもいいがん検診
民間で行われているがん検査にはメリットがあるのでしょうか。本にはこう書かれております。
結論から先に言うと、これらはメリットよりもデメリットの方が大きいと考えられているのでおすすめしません。p200
- 腫瘍マーカー検診:感度が低い(CEAの大腸がんに対する感度は46%との報告があります)
- PAS検診:前立腺がんの死亡率を減らさない
- PET検査:検診としてすすめるだけの科学的根拠がない(従来の検査に比べて、感度が低い)
3 がんになったらどうする?
がんの要因も分かりました。では、がんになったらどのようにしていけばいいのでしょうか?
3.1 標準治療一択
がんになった場合の治療法は、標準治療一択です。「標準」と聞くと、もっといい治療法がありそうな印象を受けますが、そんなものありません。標準治療がベストなのです。
がんの3つの標準治療は、
- 手術
- 放射線治療
- 抗がん剤治療
の3つです。
抗がん剤治療はイメージが悪いかもしれませんが、3つの中で近年もっとも進歩した治療でして、副作用などもかなり抑えられるようになりました。
3.2 標準治療は保険が適用される
標準治療はベストながん治療なくせして、保険が適用されます。ありがたい限りです。最高の治療を低価格で受けられるのですね。
3.3 標準治療として認められる薬は0.01%
標準治療として認められる薬は、厳しい選考を受けます。ほとんどがはじかれます。新薬10000個のうち、最終的に認められる薬は1つだけと言われております。合格確率がわずか0.01%という狭き門をくぐり抜けた薬のみ、標準治療の仲間入りができるわけです。
ちなみに抗がん剤を1つ開発するのに、700〜800億円もの開発費がかかっていると言われています。
- Comparison of Sales Income and Research and Development Costs for FDA-Approved Cancer Drugs Sold by Originator Drug Companies
- Research and Development Spending to Bring a Single Cancer Drug to Market and Revenues After Approval.
3.4 代替療法は科学的根拠がない
代替療法は科学的根拠がありません。「マウスに効いた!」「シャーレのがん細胞に効いた!」という謳い文句がありますが、それは科学界からすると科学的根拠がゲキ弱です。
標準治療は当然ながらそんな試験はパスして、もっと難しい試験(人体に投与など)をパスしております。なので、標準治療を無視して代替療法を選ぶのは、ビミョーです。
で、アメリカの研究で、標準治療を受けた患者と、標準治療を受けずに代替療法のみを受けた患者の治療結果を比べているものがあります。言うまでもないことですが、標準治療の方が6年後の生存率が高かったです。
3.5 でも標準治療はドラッグ・ラグがあるんでしょ?
海外では標準治療として承認されたけれど、日本ではなかなか承認されないことを「ドラッグ・ラグ」と呼びます。2006年度ではドラッグ・ラグが2.4年もありました。しかし、2017年では0.4年と大幅に改善されています。
3.6 標準治療を受けるにはどうすれば?
がんの標準治療は、「がん診療提携拠点病院(国が指定したがん専門の病院)」で受けることができます。場所は、国立がん研究センターのウェブサイトなので確認ができます。
また病院を選ぶときは、腫瘍内科医が在籍しているかどうかを確認することが大切です。腫瘍内科医は、抗がん剤治療を行うだけでなく、あらゆるがんの診断から治療までを記録担当する総合的ながん専門医です。
3.7 科学的根拠に基づいた8つの情報源
この本では8つの情報源が紹介されておりました。ネットを使って怪しげなサイトを開く前に、まずはこの8つを確認しておきましょう。
- 国立がん研究センター「がん情報サービス」
- 米国国立がん研究所がん情報サイト
- 海外がん医療情報リファレンス
- キャンサーネットジャパン
- 静岡県立静岡がんセンター「処方別がん薬物療法説明書」:抗がん剤治療を受ける際に、注意すべきことなどがとても詳しく解説されています。
- 日本放射線腫瘍学会:放射線治療に関する一般向けの解説がされています。
- 日本緩和医療学会:がんの痛みに関する解説がされています。
- 国立がん研究センター中央病院「生活の工夫カード」:がん治療中の生活のアドバイスがたくさん載っています。
おわりに
本書の最後では、食事が紹介されておりました。『がん対策!』という特別な食事ではなく、いつも通りの、
- 野菜たっぷり
- 加工食品減らそう
的な食事ですね。
この本と合わせて、こちらの本も読んでおきましょう。
>健康に良い食事とは?→『科学的に証明された究極の食事』を読もう
参考までに。それでは!
読書メモとして簡単に動画にしています↓↓↓
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