【読書メモ:抗生物質と人間】抗生物質をやたらに使うのはやめるべき

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腸内細菌についてまとまってて分かりやすい。#読書 #抗生物質と人間 #山本太郎

福山和寿さん(@fukuyama_kazutoshi)がシェアした投稿 –

長崎大学熱帯医学研究所教授かつ医師である、山本太郎さんの『抗生物質と人間 マイクロバイオームの危機』を読みました。
マイクロバイオーム(腸内細菌)について分かりやすくまとまっていて、とても読みやすい本でした。

いつものごとくメモしていきます“φ(・ω・。*)カキカキ

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抗生物質と人間を読んで

腸内細菌系についてはかなり勉強してきたので、サクサクと読むことができました。
それでも知識を補完できるところがありましたので、それをメモしたいと思います。

腸内細菌ってなんだよ?という方はこちらの記事を参考にしてみてください→→→

細菌と人の遺伝子

1991年にヒトゲノム計画がスタートし、2003年に完結しました。
ヒトゲノム解読結果は衝撃を与えました。

それはなぜか?

  • 線虫の遺伝子:2万500個ほど
  • ミジンコの遺伝子:約3万1000個
  • ショウジョバエ:約1万3000個

さて、ヒトの遺伝子はどれくらいでしょうか?
なんと、ヒトの遺伝子は2万数千個しかなく、ミジンコ以下だったのです(´・ω・)

そうした他生物ゲノムとの比較から多くのことがわかってきた。まとめると以下のようになる。

①ヒト遺伝子の総数は二万数千個から三万個。
②遺伝子の主要部分は、ヒトゲノムの二パーセント以下にすぎない。
③全ゲノムの四分の三は、他の生物と共通。
④約200個の遺伝子は、細菌由来と推定される。
⑤全ゲノムの約半数は、同じ塩基の繰り返しである。 p69

コレを知ると、疑問が出てきますよね。
「どうやったらヒトはミジンコ以下の遺伝子で、ミジンコ以上に複雑な体になるの?」と。

そこに腸内細菌が関係してくるのです!
腸内には1000種類を超える細菌が100兆個以上生息しています。

重さにして数キログラムで、肝臓や腎臓、心臓に匹敵する重量です。
ヒト遺伝子が2万数千個なのに対し、総遺伝子数は約300万個と、100倍以上の遺伝子が私たちのカラダにはあるのです。

そう、私たちは細菌と共生しているんです。

腸内細菌はヒトの体の機構に関与しています。
例えば、

  • 免疫系
  • ホルモン系
  • 代謝系

などなどです。

なぜ現代の疫病は増えているのか?

  • 肥満
  • 食物アレルギー
  • 糖尿病
  • 喘息
  • 花粉症
  • アトピー性皮膚炎
  • 自閉症
  • クローン病

などなどが、過去半世紀に急増したした病気です。
こうした疾病を『現代の疫病』と呼ぶ人もいます。

これらの「現代の疫病」の背後にあると、多くの研究者が考え始めているものが、抗生物質が引き起こす私たちの体内に共生する細菌叢の撹乱なのである。p41

そう、抗生物質の使用が問題視されているんですね。

腸内細菌の大きな変化

人類の歴史を振り返ると、腸内細菌環境の大きな変化は少なくとも3回ありました。

  1. ヒトが火を利用し、加熱調理を始めた時
  2. 狩猟採集から農耕を始め、動物タンパク中心から穀物中心に変化した時(約1万年前)
  3. 約70年前に始まった抗生物質の使用

意外かもしれませんが、抗生物質が使われ出したのは人類史的にいうとちょっと前なんです。
現代病と呼ばれる病気も、この辺りから出てきています・・・ということは?

子どもと抗生物質

  • 生後6ヶ月以内に抗生物質を投与された子どもは、より肥満傾向に向かう
  • 自閉症の子どもは乳児期に抗生物質使用が多く見られた。また自閉症の子供のうち、約半数が慢性的下痢などの消化器官系疾患を抱えている

ヒトの成長にとってどの時期が最も重要かといえば、それは最初の数ヶ月である。その時期の影響は、抗生物質投与を含めて、その後の人生に長く影響及ぼす。p107

まじでやばい病気以外で抗生物質を使わないほうが吉だと思います。

薬剤耐性菌の脅威

今の時代は「とりあえず抗生物質」を体に打ち込みます。
そのおかげで増えてきてるのが抗生物質の効かない“薬剤耐性菌”。

抗菌薬耐性についての検証チームを率いた元ゴールドマン・サックスのエコノミストであるジム・オニールは、2014年の報告書で次のように述べている。「抗菌薬耐性細菌のために、現在世界全体で毎年70万人が死亡している。現在の状況がこのまま続くとすれば、2050年には、その数が1000万人人に及ぶだろう。」p9

がんで死ぬ人よりも薬剤耐性菌で死ぬ人の方が多くなるなんて言われています→→→

抗生物質の機能

使える抗生物質は、次の2つの条件を満たすものです。

  1. 病原菌の発育または機能を阻害する
  2. ヒト(または動物)には効果がない

つまり、ヒトに副作用の少ないものだけを抗生物質として使うことができます。
これを『選択毒性』と言います。

選択毒性は大きく分けて次の4つに分類できます。

  1. 細菌の細胞壁の合成を阻害(ヒトは細胞壁を持たない):ペニシリンやセフェム系抗生物質
  2. 細胞膜機能を阻害(細胞膜は生命維持に必要な物質を投下している):コリスチンやポリミキシンB
  3. 核酸の合成を阻害(細菌とヒト細胞の増殖速度の違いを利用し、DNAやRNAの合成を阻害):ニューキノロン系呼応性物質
  4. リボソームに作用しタンパク質の合成を阻害(ヒトと細菌はリボソームの種類が違う):ストレプトマイシンやクロラムフェニコール

グラム陰性菌とグラム陽性菌

細菌は大きく2つに分類されます。

  • グラム染色によって紫に染まるグラム陽性菌
  • グラム染色によって染まらず赤く見えるグラム陰性菌

染色の違いは『細胞壁の構造』に由来します。

  • グラム陽性菌:細胞壁を構成するペプチドグリカン層が厚い
  • グラム陰性菌:ペプチドグリカン層が薄い&外膜を有する

この違いがあるので、使われる抗生物質が違います。

グラム陽性菌には、細胞壁阻害をするペニシリン系抗生物質。
グラム陰性菌では、ペニシリンより外膜の投下性と投下速度が優れているセフェム系抗生物質。

抗生物質はウィルスには効かない!?

これ、意外と知らない人がいるんですが、抗生物質はウィルスには効きません!
というのも、ウィルスは生物とは言えないし、抗生物質が作用する細胞壁やら細胞膜を持っていないからです。

だから、インフルエンザにかかっても抗生物質は効きません!

医者側も、抗生物質投与の害はほとんどないと考える。そのため、急性上気道炎で外来を受診した患者の約6割に抗生物質が投与されるという事態が起こる。さらに言えば、投与される抗生物質の多くは、様々な細菌に効く広域抗生物質となっている。p26

*急性上気道炎はウィルス性の風邪

これが“薬剤耐性菌”の発生のモトでもあるのです(´・ω・)

窒素固定をする腸内細菌

パプアニューギニアの高地にくらす人々は、サツマイモ(炭水化物)を主食にしており、動物性タンパク質の摂取が少ないのです。
ヒトの窒素必要量は、体重1キログラム当たり最低で105ミリグラムとされていますが、1975年の調査ではパプアニューギニアの高地にくらす人々は50~75ミリグラムしか摂取できていませんでした。

タンパク質の摂取量が少なければ、

  • 筋力減少
  • 免疫力低下

が見られますが、そういったものは見られないばかりか、むしろ筋肉質な体格で健康的に暮らしていました。
そこで調査を行いました。

その結果、彼らの便から排泄される窒素量(タンパク質の代理指標)は摂取量より1日平均で2グラムも多いことが明らかになった。p79

という、驚きな結果が出たのです。
摂取量より多いって笑。

1グラムの窒素は、6.25グラムのタンパク質に相当する。つまり、パプアニューギニアの高地人では1日平均で12.5グラムのタンパク質が過剰に排泄されているということになる。p79

これがなにを意味するのか?
そういう役割をする細菌がパプアニューギニア人のお腹の中にいるんじゃね?ってことです。

窒素をアミノ酸の材料とするには、硝酸塩やアンモニアといった窒素化合物への変換が必要になります。
この過程を窒素固定と言います。

そして、窒素固定を行う細菌を“窒素固定細菌”と呼びます。
代表的な窒素固定細菌がマメ科植物の根粒菌になります。

植物は成長するために窒素化合物が必要ですが、自身では空気中の窒素を捉えることができません。
その代わりに根粒菌が空気中の窒素を捉えて、植物に窒素化合物を与え、その見返りとして植物は光合成のエネルギーで作った有機物を根粒菌に与えるという共生関係を作ります。

これと同じように、窒素固定細菌がパプアニューギニアの腸内に生息していると考えらました。

結果は、パプアニューギニア高地人であるか、日本人であるかにかかわらず、ヒト腸内には窒素固定活性を持つ細菌が存在すること、さらに遺伝子を解析したところ、ヒトの窒素固定細菌として、クレブシエラ属とクロストリジウム属の細菌が候補となることが示唆された。なかでも、クレブシエラ属細菌は、土壌、水、植物、など多様な環境下で窒素固定活性を示す細菌としても知られており、ヒト・マイクロバイオータのなかでも、優勢種ではないが、その存在が確認されている。p82

日本人にもいるんだーという驚きの結果となりました。

古く遠い先史の時代から、あるいはそれ以前から人類はしばしば飢餓に直面した。タンパク質に恵まれない期間を経験することもあっただろう。そうした状況が、人類が窒素固定細菌を常在菌として保持する選択圧になったとしても不思議はない。p83

まとめ

この記事では『抗生物質と人間』について書いてきました。

腸内細菌系の本の入門書としては最適だと思います。
翻訳された本と比べても薄くて、半日もあれば読み切れるはずです(`・ω・´)”

今回の記事も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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