【リーキーガットとは?】腸から漏れ出す物質や細菌が血管中に入り、全身の炎症を引き起こす

リーキーガットになると 腸内細菌が血液中へ!? 腸内フローラを改善する
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リーキー・ガットを日本語に直すと『漏れ出す腸』です。リーキーガットの意味は、『腸内環境が崩れて腸のバリア機能が低下すること』で、そうなると腸にある様々なものが血液中に入ってしまう状態になります。

 

そんな中、糖尿病と腸内細菌の関係がわかってきています。今回の記事も前回の『夜更かしすると腸内細菌が変化して太る?』に引き続き、『腸内フローラ10の真実』から気になったことを書いていきたいと思います。

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1 血液中に腸内細菌がいる

2014年、順天堂大学とヤクルト中央研究所の共同研究グループが、衝撃的な研究を発表しました。『糖尿病患者の血液中に、生きた腸内細菌がいる』と。

1.1 血液中に細菌がいるのは異常事態

知らない人はびっくりするかもしれませんが、食道から胃、腸、肛門にかけては『体外』です。体内ではありません。「え?体内じゃないの?」と思うかもしれませんが、皮膚とかと同じ体外なのですね。

 

よく考えてみると分かると思います。口の中って体外ですよね?だったら、食道も胃も腸も口と繋がっていますから、『体外』です。そう考えると、腸に住んでいる腸内細菌も体外の細菌です。つまり、体外に細菌が住み着いていても普通の事なのですね。

 

しかし、体内に細菌がいる場合は異常事態です。普通は体外にいる細菌が体内にいるのですから、これは大問題です。血液中に生きた細菌がたくさんいることを『敗血症』といい、臓器障害が起こり死に至る病気です。

細菌感染症の全身に波及したもので非常に重篤な状態であり、無治療ではショック、DIC、多臓器不全などから早晩死に至る。元々の体力低下を背景としていることが多く、治療成績も決して良好ではない。引用:ウィキペディア 敗血症

1.2 糖尿病患者は血液中に細菌がいる割合が多かった

ヤクルト中央研究所が開発したすごい機械(ごくわずかな細菌でも検出できる)だと、糖尿病でない人も50人中2人の血液から生きた細菌が見つかりました。そして、なんと糖尿病患者ではなんと50人中14人も血液中から細菌が見つかったのです。(敗血症を起こすほどのものではありません)

1.3 腸の壁がブロックし、血液中には入らないようになっている

通常、腸内細菌は腸の細胞の壁と粘液層にブロックされるため、細菌が血液中に侵入することはありません。しかし、腸内環境に不具合が生じ腸の粘液層が薄くなると、リーキー・ガットと呼ばれる状態になり、細菌が腸のブロックを抜けて血管中に侵入していきます。

 

ちなみに腸の粘膜層を保っているのがアッカーマンシア・ムシニフィラという腸内細菌です。『脂肪たっぷりの食事がが腸内細菌に与える影響』の記事でアッカーマンシア・ムシニフィラについて触れているので、ご参考にしてみてください。

2 腸内環境と炎症について

なぜ糖尿病患者の血液中には細菌がいるのでしょうか?結論から言うと、全身が炎症を起こしているからです。それについて具体的に以下で見ていきます。

2.1 糖尿病と炎症

一型糖尿病は遺伝的な問題で、二型糖尿病はすい臓から分泌されるインスリンの働きが悪くなっている、と言われています。ですが、糖尿病は単に「すい臓が悪くなる病気」ではありません。そもそもは体全体でインスリンの働きが悪くなることに起因します。

 

じゃあなんでインスリンの働きが悪くなるの?という話ですが、『全身の炎症』が原因だと考えられるようになってきています。炎症というのは傷口が赤く腫れるような状態のことです。腫れることで体に警報を発し、そこに免疫細胞が集まるようにして敵をやっつけるのですね。皮膚などの体外であれば目に見えるため、炎症に気がつくのは容易いです。しかし体内の炎症は目に見えないため、気がつきづらという厄介な問題点があります。

 

で、糖尿病患者は全身の血管が弱い炎症状態になっていることがわかっています。炎症を起こしている周囲の細胞では、インスリンがうまく働かないため、それが原因で糖尿病になると考えられるようになっています。

 

細胞を炎症状態にさせる原因はいくつかあります。例えば、肥満です。脂肪細胞が肥大化すると、様々な有害物質を出します。その有害物質は、細胞の炎症を助長させます。

2.2 LPSが炎症を引き起こす

細菌も細胞の炎症に関係します。そして腸から漏れ出した細菌が、全身の炎症状態を引き起こしています。

 

じゃあなんで細菌が炎症状態と関係しているの?という話ですが、これにはLPSという物質が関係しています。糖尿病患者の血液中はLPSの濃度が高いことが報告されています。

 

LPSは腸内細菌が作り出す副産物の1つであり、これは体内にとって毒です。腸に異常がなければ、LPSはそのままLPSは排出されます。しかし、腸のバリアが弱くなりリーキー・ガット状態になると、LPSが腸から漏れ出し血液中に侵入します。

 

そして順天堂大学のグループの研究で、リーキーガットだとLPSだけでなく腸内細菌までもが血液中に侵入してくることが分かりました。

 

腸内細菌が体に有用であるためには、腸内に生息していなければなりません。血液中に入った腸内細菌は、もはや体の敵でしかありません。

2.3 リーキーガットは動脈硬化にも関係している

リーキー・ガットになると、糖尿病だけでなく動脈硬化にも関係があると言われています。動脈硬化と聞けば、血管中にコレステロールが溜まっているというイメージがあるかもしれません。ですが、実を言うと血管に溜まっているものの大部分はコレステロールではなく、白血球の死骸なのです。

 

なぜ白血球の死骸が血管にたまってしまうのでしょうか?これも全身の炎症が関係しています。

 

リーキーガットでLPSが血液中に増えると、全身が炎症状態になります。炎症状態になると、マクロファージを含む白血球たちが全身のパトロールを開始します。

 

マクロファージは、血管の壁にたまっている悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを食べて退治します。ですが、残念ながらマクロファージはコレステロールを消化することができないため、コレステロールをどんどん溜め込み、最後には死んでしまいます。マクロファージの死骸が溜まり、血管の壁が分厚く盛り上がってしまうと言うわけです。(マクロファージがコレステロールをため込んだ姿を顕微鏡で見ると、泡立ったように見えるため、泡沫細胞と呼ばれます)

 

本来なら退治しなくてもよいLDLコレステロールを、なぜマクロファージは退治するのでしょうか?そこに全身の炎症状態が関係しています。

 

全身が炎症状態ということは、マクロファージを含む白血球たちが常に戦闘状態ということです。マクロファージは、戦闘状態に入ると「炎症性サイトカイン」と呼ばれる仲間を呼び寄せる物質を放出します。炎症性サイトカインにより、どんどんマクロファージが集まり、そしてどんどん炎症性サイトカインを放出し…と、この繰り返しで炎症状態が続くわけです。

 

これが全ての動脈硬化の話に繋がるわけではありませんし、まだまだ不明確なところはあります。でも、このように考えもあるのですね。

万病の元、慢性炎症に気をつけよう!【炎症を抑える方法】

3 腸のバリアを高めるには?

腸のバリアを高める物質は、このサイトでもなんども紹介している『短鎖脂肪酸』です。そしてこの短鎖脂肪酸は、腸内細菌が作り出すのでしたね。

3.1 腸壁の細胞は短鎖脂肪酸がエネルギー

なぜ短鎖脂肪酸が腸のバリアを高めるかというと、腸壁の細胞は短鎖脂肪酸をエネルギー源としているからです。そのため腸内環境が乱れ、腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸の量が減ると、腸の細胞が弱くなり腸のバリア機能が低下してしまうと言うわけです。

3.2 短鎖脂肪酸を作るには?

では、どうやったら短鎖脂肪酸を作ることができるのでしょうか?それは、腸内細菌に栄養を与えてあげることです。腸内細菌の栄養源は『食物繊維』でしたね。

 

つまり食物繊維の豊富な野菜を毎日しっかり食べましょう!ということです。

おわりに

糖尿病患者の血液中に腸内細菌がいるというのは、なかなか驚くべき話ではなかったでしょうか?もちろん全ての糖尿病患者の血液中に腸内細菌がいるわけでもないので、この話を全てに当てはめることはできません。しかし、糖尿病と腸内細菌の関連性はあるのではないかなぁと思います。

 

で、ここでもキーワードなってきた『短鎖脂肪酸』。短鎖脂肪酸はTレグ細胞にも関与しており、Tレグ細胞は免疫を抑制する働きがありました。

 

炎症が起こると活発に免疫細胞たちが動き出し、やたらめったら攻撃を仕掛けます。だからLDLコレステロールにも攻撃をガンガン仕掛けるわけです。

 

この免疫の暴走を抑制するためにも、Tレグ細胞はやっぱり重要なのです。ということで、しっかりと食物繊維を摂取して腸内細菌に餌を与え、たくさん短鎖脂肪酸を作ってもらいましょう。参考までに。それでは!

*腸内環境の大切さを勉強するためのオススメ本

今までに多くの『腸内環境の大切を伝える本』を読んできました。その中でもイチオシなのがアランナ・コリン先生の『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』になります。

分厚くて少々読みにくいかもしれませんが、腸内環境の大切さを深く知っておく上で外せない一冊になります。

「もうちょっと読みやすい本を頼むぜ!」という方のためオススメできる本は、『腸科学』になります。こちらは読みやすいと思います。

どちらのほんも「腸内細菌スゲー」と思うこと間違いなしです!

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