いろいろな病気と関係している腸内細菌ですが、なんと自閉症にも関係していると考えられています。
1 自閉症と腸内細菌
自閉症と腸内細菌の関係を発見したのは、カリフォルニア工科大学のイレイン・シャオ博士です。シャオ博士は、自閉症という謎の多い病気に、腸内細菌が関係しているのではないかという新たなアプローチを見つけました。
自閉症の患者数は世界的に増加しています。遺伝子解析の結果、自閉症と関連する遺伝子がいくつか見つかっていますが、それが自閉症の決定要因ではないため、自閉症の原因は未だ解明されておりません。自閉症には多くの要因が複雑にからみあっているるため、「これだ」と言えるものがないのです。(また、自閉症には様々な症状があるため、「自閉症」とひとくくりにすることはできないことに注意です。)
1.1 自閉症モデルマウスを用いた研究
シャオ博士は、自閉症モデルマウスと呼ばれる特別なマウスを使って研究を行っています。モデルマウスとは、人間の病気や疾患を模した研究用マウスのことです。
自閉症モデルマウスでは、自閉症患者に似たコミニケーションの低下が見られます。マウスは声を使ってコミニケーションをとります。普通のマウスは1分間に150回ほど鳴き声を発しますが、自閉症モデルマウスではその3分の1程度しか鳴き声を発しません。マウスの鳴く回数の減少は、人間の自閉症の症状の1つであるコミニケーション障害に似ていると考えられています。
1.2 自閉症モデルマウスはリーキーガットだった
シャオ博士は、なぜ自閉症モデルマウスではコミニケーション能力の低下が見られるのかを、普通のマウスと比べて調べました。その結果、腸に異常があることがわかりました。
なんと自閉症モデルマウスは、リーキーガットリーキーガットになっていたのです。本来の腸であれば、細胞がびっしりと詰まっているため外敵や毒の侵入を防ぐバリア機能が働いています。しかし自閉症モデルマウスは腸のバリア機能が弱まり、腸の隙間から病原体や毒素が侵入し、血液中に流れていました。
そこでシャオ博士は、マウスの腸を修復するために、整腸作用を持つ薬を飲ませることにしました。すると、低下していたコミニケーション能力が改善され、ほとんど正常になったのです。なんと自閉症の症状は、腸の機能に関係していたということです。(バクテロイデス・ フラジリスという菌が入っている整腸剤を飲ませた)
1.3 腸内細菌が作る「4EPS」が自閉症に影響を与えている
さらに調べていくと、コミニケーション能力の低いマウスでは血液中に「4EPS」という物質が、普通のマウスに比べて80倍も増えていることがわかりました。
そして、整腸作用を持つ薬を飲んだ後では、4EPSは普通のマウスと同じ程度にまで下がっていました。逆に普通のマウスに4EPSを注射すると、コミニケーション能力が低下することまでわかりました。どうやらコミニケーション能力の度合いに、4EPSが関係しているようです。
では4EPSはどこから作られているかと言うと、腸内細菌が作り出す物質だったのです。どの腸内細菌が4EPSを作っているのか、4EPSは体内でどのような働きをしているのか、詳細についてはまだわかっていません。
とりあえずわかっていることは、コミニケーション能力の低いマウスでは、腸内細菌が作り出した4EPSが腸をすり抜けて体内に入っているということです。また整腸剤を飲むと、腸のバリア機能が回復し4EPSが体内に侵入するのを防げるということです。
1.4 自閉症患者も4EPSは多い
腸内細菌と自閉症モデルマウスの関係はわかりました。では人はどうなのでしょうか?
まだはっきりとした事は分かっていませんが、自閉症患者と一般の人の血液の成分を比較してみると、自閉症患者では血液中の4EPSが増えていることは分かっています。
1.5 毒にも薬にもなる腸内細菌
腸内細菌と聞くと、腸内フローラを整えようと意識される方にとっては良いイメージがあるでしょう。しかし今回見てきたように、腸内細菌が作り出す物質が腸内をすり抜けて血液中に入ってしまうと、体に害をもたらします。
善玉菌や悪玉菌といった区分を人間はしますが、それは人間にとって便利な分け方なだけであって、腸内フローラに善玉菌と悪玉菌という厳密な区分はありません。なんにせよ、本来なら腸にいるべき物質やら細菌やらが、リーキーガットで漏れ出し、体内に入ってくるのは良くありません。ですから、リーキーガットになることは避けなくてはなりません。
おわりに
自閉症に腸内フローラが関係しているかもしれないという話を、書いてきました。なかなか興味深い話なのではないでしょうか。
現段階では「腸内細菌のこれが自閉症に関係している!」ということは言えません。だけれども、ある程度関係性があると言う事までは分かっているので、私たち個人ができる事は、「腸内フローラを整えること」ですね。つまり腸内細菌の餌になる野菜(食物繊維)をしっかりと食べていこうということです。参考までに。それでは!
*腸内環境の大切さを勉強するためのオススメ本
今までに多くの『腸内環境の大切を伝える本』を読んできました。その中でもイチオシなのがアランナ・コリン先生の『あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた』になります。
分厚くて少々読みにくいかもしれませんが、腸内環境の大切さを深く知っておく上で外せない一冊になります。
「もうちょっと読みやすい本を頼むぜ!」という方のためオススメできる本は、『腸科学』になります。こちらは読みやすいと思います。
どちらのほんも「腸内細菌スゲー」と思うこと間違いなしです!
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